ステップ気候(BS)とは?農業や分布地域の覚え方を伝授!!
今回は、ステップ気候について解説していきたいと思います。
でも、あることを意識すれば余裕だよ!
ステップ気候は、土壌や植生などほかの気候区とは違う点もあるので、覚えるのが大変と思うかもしれません。
でも、実はステップ気候のある特徴さえ抑えてしまえば、流れで全ての暗記事項がわかってしまうのです。
では、ステップ気候で大事なこととは一体何なのでしょうか?
それは、ズバリ雨が少ししか降らない!ということです。
何だ当たり前のことじゃないかと思った人もいるでしょう。ですが、これがすべての基礎なのです。
ということで、今回はこのポイントを意識して確認していきましょう!
ステップ気候(BS)の特徴とは?
ステップ気候とはなんなのでしょうか?
受験テクニックの前にまずは、ステップ気候になる条件から確認していきましょう。
降水量:概ね年降水量250mm〜750mm
(厳密には乾燥限界をrとしたとき r/2以上 r未満)
というのがステップ気候(BS)の条件になります。ちなみにBSの「S」はステップ(=Steppe)のSです。
乾燥帯に関しては、厳密な定義よりも大まかな目安を知っておいた方が大学受験では役立つので、定義というよりは大まかなステップ気候の条件を抑えておきましょう。
乾燥限界について詳しく知りたい方は、『地理の乾燥帯の特徴をまとめてみた!雨温図を一瞬で見分ける方法も紹介!』の記事内に書いているので参考にしてみてください。
年間降水量が250mm〜750mmというのがおおよその目安なので、もちろん降水量が少ないのですが、砂漠気候(BW)とは違って雨が少し降る季節もあるというのがステップ気候の特徴ですね。
基本的にはサバナ気候(Aw)と同じように、亜熱帯高圧帯の影響を受ける時期に乾季になります。
亜熱帯高圧帯に関しては、サバナ気候の記事で説明しています。砂漠気候とはどんなんだっけという人も、別記事で解説しているので、そちらを見てみてください。
要するに、ステップ気候とは、
基本的に乾燥しているが、雨が少し降る季節がやってくる気候
ということになります。
ステップ気候の分布を確認!
ステップ気候の特徴もわかってきたところで、世界中にどのように分布しているのかを見ていきましょう。
ステップ気候は、世界中に散らばっているように思えて覚えるのが難しそうですね。
しかし、あるポイントに気づけばほぼ労力なしで暗記することができます。
それは、
ステップ気候は、砂漠気候を帯状に取り囲むように分布している!
ということです。どういうことでしょうか?これだけではよくわかりませんよね。
ということで、実際に砂漠気候とステップ気候の両方を示した地図を見てみましょう。
こうしてみると、本当に砂漠気候の周辺を取り囲むようのステップ気候が分布していることがわかるのではないでしょうか。
つまり基本はこれだけ覚えておけば対処できるようになるのです。
というわけで、ステップ気候は砂漠気候の周囲に存在しているということを頭に入れて具体的な分布をみていきましょう。
砂漠気候の分布がよくわかっていないという人は、『砂漠気候(BW)とは?住居やオアシスもたった1つのポイントで攻略!』の記事内で詳しく説明しているので、参考にしてみてください。
アジアは広範囲に分布!
この地図をみると、基本的に砂漠気候の周辺に帯状に分布していることがわかると思います。
インドの内陸がステップ気候になっていますが、本来この地域は回帰線が通っているので砂漠気候になるはずなのに夏のモンスーンの影響によって雨が降るからです。
しかし、比較的内陸にあるためそこまで激しい雨が降るわけではなくステップ気候になってしまうというわけです。
アジアでもう一つ覚えておいて欲しいことは、カスピ海の北東側、中央アジアに広がるステップ気候です。
この地域の草原のことをカザフステップといい、まさにステップ気候という名前の由来はここから取られているのです。
いずれにしても、アジアは広大なので内陸部は乾燥して、広くステップ気候が分布していているということですね。
アフリカは用語に注意!
アジアの次はアフリカです。
アフリカも基本通りですね。砂漠気候の周辺にステップ気候が分布していることがわかるのではないでしょうか。
キンバリー(南アフリカの都市)付近の砂漠は、大陸西岸を流れている寒流の影響を強く受けるので、内陸の方が雨が降るステップ気候になっているのです。
アフリカで覚えておかなければならないことを一つだけ挙げるとしたら、サヘルですね。
サヘルとは、サハラ砂漠の南側の部分のステップ気候のことをいいます。
砂漠気候よりもステップ気候の方が人間生活を送りやすく、少ない水を使ってしまうので、砂漠化が懸念されています。
環境問題と絡めて出題されることも多いので、しっかり用語と場所をリンクして覚えておきましょう。
北アメリカは南西部!
北アメリカのステップ気候はどのように分布しているのでしょうか?
北アメリカもアフリカと同じように砂漠気候の周辺にステップ気候が分布しています。
寒流であるカリフォルニア海流が大陸西岸を流れているため、海岸沿いは砂漠気候になっていますが、内陸は寒流の影響が弱いため、雨が少し降るステップ気候というわけです。
グレートプレーンズと呼ばれる大平原はステップ気候に属しているため、名前を覚えておきましょう。
また、アメリカの南西部はステップ気候になっているため、アメリカを覚えるときは、
アメリカのステップ気候は北緯40°以南、西経100°以西に分布!
と覚えておくと何かと便利です。
続いて南アメリカ!
北アメリカの次は、南アメリカです。
南アフリカも砂漠気候の周辺にステップ気候が分布していますね。
アルゼンチンのあたりにパンパと呼ばれる平原が広がっているので覚えておきましょう。
パンパとは草原の名前なので、ステップ気候に属するものはその中でも乾燥パンパと呼びます。
また、南アメリカ大陸の北部、ベネズエラあたりにも少しステップ気候が分布しているので、頭の片隅に入れておきましょう。
最後はオーストラリア!
ここまでくれば、あとはオーストラリアを確認するだけです。
オーストラリアはとても単純ですね。
砂漠気候が大陸の内陸部にあって、その周辺をステップ気候が取り囲んでいるのです。
カンのいい皆さんなら気付くかもしれませんが、砂漠気候のど真ん中にステップ気候が存在している部分があることが不思議に思えるかもしれません。
これは、この地域にマスグレーヴ山脈という標高の高い地域があるからです。あの有名なウルル(エアーズロック)もここにあります。
この地域だけ、周りと比べて標高が高いため、風が通ると上昇気流が発生して雲ができるんですね。そうすると、他の地域よりも降水量が多くなって、結果的にステップ気候に分類されるというわけです。
オーストラリアは、ちょっとだけ例外パターンがありましたが、これで完璧です。
ステップ気候の植生と土壌!
それでは、ステップ気候の植生と土壌について解説していきましょう!
ステップ気候は乾燥帯ですが、砂漠気候と違って植物が生えるため、ここはしっかり抑えていきましょう。
植生は簡単!
ステップ気候は植物が生えることができるといいましたが、植生に関してはそこまで覚えることは多くありません。
砂漠気候よりは湿っているのですが、結局は乾燥帯なわけですので、雨が降る季節に植物がちょろっと生えるくらいです。
雨季に短草や低木が育つ草原が出現します。この草原のことをステップと呼ぶのです。
イネ科の植物が多いステップですが、乾燥してくると水が足りずに枯れてしまいます。
乾季になると枯れるというフレーズはどこかで聞いたことがありますね。
そうです、サバナ気候です。サバナ気候でも長草草原が乾季になると枯れてしまいました。では、サバナ気候とステップ気候の違いは何なのでしょうか?
正解は、疎林があるかどうかです。
サバナ気候は、バオバブやアカシアなどの大きい木が生えることができましたが、ステップ気候はそこまで雨が降るわけではないので、大きな木は生えません。この違いを意識しておきましょう。
サバナ気候については次の記事で詳しく解説しています。
土壌は植生の影響を考えよう!
植生の次は、土壌について考えていきましょう。
これは、植生が一年を通してどのように変化していくかを考えれば簡単に理解することができます。
ステップ気候の土壌について考えるときは、降水量に関してもうちょっと場合を分ける必要があります。
降水量が比較的多い地域
まずは、降水量が比較的多い地域です。
雨が多く降るということは、雨季には密度の高い草原が出来上がります。
そして乾季になると、草原が枯れてしまうのでしたよね。草が枯れると養分の豊富な腐食層が出来上がります。
このため、肥沃な黒土が形成されるのです。
具体的な地域を例に挙げると、次のようになります。
- チェルノーゼム:ウクライナ周辺
- プレーリー土:北米大陸
降水量が割と少ない地域
ステップ気候の中でも、降水量が少ない地域は草が十分に育たず、土が剥き出しの裸地が多く、あまり草が枯れて腐食することがないため、栗色土になってしまいます。
腐食があまり進まないので、黒色まで行かずに栗色で止まってしまうのですね。
ステップ気候の植生と土壌をまとめます。
植生:ステップ(雨季に短草が育つ)
土壌
- 黒土(雨が多い地域):チェルノーゼム、プレーリー土
- 栗色土(雨が少ない地域)
ステップ気候の人間の生活は?
ステップ気候に住んでいる人間はどのような生活をしているのでしょうか?
まずは、農業から見ていきましょう。
ステップ気候の農業
農業は土壌と深く関わりがあります。
ステップ気候の土壌は黒土と栗色土の2種類がありましたよね。ということで、農業も2つに場合わけして見ていきましょう。
黒土
先ほど説明したように、黒土はとても肥沃なのでしたよね。肥沃な土壌では、農業が盛んなはずです。
ここで覚えておくべき作物はたった一つ、小麦です。
ウクライナ周辺のチェルノーゼムでも、北米のプレーリー土でも小麦が大規模に栽培されています。
栗色土
栗色土は、黒土よりも栄養分が少ないので、作物を栽培するよりも牧畜が盛んです。
- 旧大陸(アジア、ヨーロッパ、アフリカ)→遊牧
昔から人が住んでいた地域は、ヤギや羊、馬などを放牧して生活しています。
放牧とは、あまり草が生えていないので、家畜の餌となる草を食べさせながら移動していくやり方です。草を食べ尽くさないようにという工夫がされているのですね。モンゴルなどで見られます。
- 新大陸(南北アメリカ、オーストラリア)→企業的放牧
新しく人が住むようになった地域では、土地が広大にあるので、その広大な土地を生かして牛などの企業的な放牧が行われています。
このように、その土地の土壌の特性を生かした農業の文化が根付いているわけですね。
ステップ気候の住居
ステップ気候の住居はそこまで重要なものはないのですが、特徴的な形の住居が一つあるので、紹介しておきます。
それは、アジアの内陸部などで行われている遊牧民の住居です。
家畜と主に餌となる牧草を求めて移動するので、家も移動しやすいように移動式のテントになっています。
この点テントは地域によって呼び名が変わり、モンゴルではゲル、中国ではパオと呼ばれています。
ステップ気候の環境問題
どの地域にも人間が生活している以上、環境問題はつきものですよね。
ステップ気候にも環境問題があるので最後に紹介しておきます。
もうわかっているかもしれませんが、乾燥地域の中では水が多いステップ気候なので、人が多く集まり開発によって自然が破壊されてしまうということがよく起こります。
例えば、アフリカのサヘルのように、人口が増加して農業をしすぎてしまい砂漠が進行してしまっている地域もあります。
また、カザフスタンとウズベキスタンにまたがるアラル海では灌漑により綿花の栽培を拡大して、その結果塩分濃度が上がって塩性土壌化が進んでしまったという事例もあります。
砂漠に近い地域は一度植物が生えなくなると、土壌がさらに痩せてしまいどんどん砂漠化が進んでしまうという問題もあります。
このような環境問題は、試験問題にしやすい箇所でもあるのでしっかり頭に入れておいてください。
ステップ気候(BS)のまとめ
今回は、ステップ気候について解説してきました。
ステップ気候は覚えることが多そうでしたが、案外整理していけば簡単に攻略できそうですよね。
ということで、最後にステップ気候の特徴を簡単にまとめておきます。
分布:砂漠を帯状に取り巻くように分布
- 西アジア〜北アフリカ(サヘルなど)
- ウクライナ〜カザフスタン
- グレートプレーンズ(北アメリカ)
- 乾燥パンパ(南アメリカ)
特徴
- 気候:季節によっては雨が降る
- 植生:雨季はステップ
- 土壌:肥沃な黒土(チェルノーゼム、プレーリー土)、栗色土
農業
- 農耕:小麦の大規模栽培(黒土地域)
- 牧畜:ヤギ・牛・馬の遊牧(アジアなど)、牛の企業的放牧(アメリカ、オーストラリア)
ステップ気候は雨が少し降るということを意識しておけば、そのほかの特徴も導くことができますね。
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⇒⇒砂漠気候(BW)とは?住居やオアシスもたった1つのポイントで攻略!
◎ケッペンの気候区分について詳しく知りたい人
⇒⇒【まとめ】地理のケッペンの気候区分をたった4ステップで覚える方法
ということでステップ気候の解説はこれで終わります!
Comment
はじめまして。本日初めてこちらのサイトに訪れましたが、非常に分かりやすく地理のことが解説されており、夢中で何ページも読んでしまっています。楽しい解説をありがとうございます。
1点、ステップ気候について解説されている以下のページにて、
https://juken-geography.com/systematic/bs/#dojou
ページ下部「ステップ気候の環境問題」の項目の中で、アラル海がロシアのものとして紹介されています。
灌漑農業を行ったのはソ連であったかもしれませんが、現在の国の区分けではカザフスタンとウズベキスタンにまたがって位置しているかと思いましたので、念のためご連絡いたしました。
ご指摘ありがとうございます!
修正いたしました。