粗放的農業と集約的農業の違いとは?土地生産性と労働生産性についてわかりやすく解説!
どうも、ひろです。
今回は、農業の生産性について解説していきます。
農業の生産性とはなんぞやと思うかもしれません。
しかし、高校地理の農業をしっかり理解するためには非常に大事な考え方です。
今回は、高校地理ので農業を分類する際にも使われる考え方である農業の生産性についてしっかり解説していきます。
農業の生産性と集約度
生産性について考えるには、もう一つ別の指標である「集約度」に注目する必要があります。
集約度とは、ある土地に労働力や資本、組織をどれだけ投入しているかという指標です。
資本とは、大まかにいうとお金のことで具体的には化学肥料や農薬、農業機械のように農業をより効率的にするためのものです。
農業を行う上で考えなければいけないことは、どうしたら土地を最も賢く利用できるかということです。
世界には様々な環境があり、特にその土地の土壌は肥料を使うことで多少は栄養分を上げられるかもしれませんが、基本的には変えることはできません。
したがって、どうすれば最適な農業ができるかというのは環境によって違います。
それぞれの土地で最適な形で農業を行うことで、結果として生産性が上がるので、農業の「集約度」と「生産性」は切っても切れない関係なのです。
では、農業の効率性を測る指標である集約性と生産性についてそれぞれ解説していきます。
農業の集約度
まずは、集約度です。
集約度とはあまり聞かない言葉かもしれませんが、要するに一定の面積にどれだけのコストを割いているかということです。
労働集約度と資本集約度の2つの観点から考えます。
- 労働集約度
土地に対してどれだけ人数をかけているか
- 資本集約度
土地に対してどれだけ資金をつぎ込んでいるか
それに対して、資本集約度の方は、ある土地にどれだけのお金をつぎ込んでいるかという指標でした。
つまり、肥料や農業機械、農薬など、使うと収穫量がアップするような物をどれだけ使っているかということです。
このように、労働力と資本の集約度というのを考えてきたわけですが、集約度が高いか低いかで、次のように呼び名を分けることができます。
- 集約的農業
農地に多くの労働力や資本を投下する農業
- 粗放的農業
農地にあまり労働力や資本を投下しない農業
この2つの区別をつけておきましょう。
農業の生産性
続いて、生産性です。
労働力や資本を集約した結果として生産性が上がるのでした。
生産性は、土地生産性と労働生産性の2つの観点から考えてみます。
- 土地生産性
単位面積あたりの生産量
- 労働生産性
農民1人あたりの生産量
狭い農地で多くの生産量をあげている場合、単位面積あたりの生産量は多くなるので、土地生産性が上がります。
例えば、日本を含むアジアの国々は、人口が多かったり国土面積が狭かったりと、1人が使える面積が狭くなります。
狭い農地でも効率よく生産するために、肥料やビニールハウスを使って土地生産性を上げているわけです。
それに対して、いかに少ない労働力で多くの農産物を生産できるかというのが労働生産性です。
人口に対して面積が広い新大陸(北米やオーストラリア)などは土地生産性は低くいですが、労働生産性は高くなっています。
これは、少ない人数で広大な農地を管理するという大規模な農業が行われているからです。
両者ともそれぞれの特徴を生かした農業形態をとっているわけです。
生産性と集約度の関係
さて、生産性と集約度という2つの考え方が出てきたので、こんがらがっている人もいると思います。
なので、生産性と集約度についてどのような関係性があるのかここでしっかりまとめておきたいと思います。
労働力や資本を集約した結果、生産性が上がるので、生産性のグラフにおいて「集約する」という行為は矢印で表せそうです。
今回は、すべて同じ面積の農地で考えます。スタートは粗放的農業です。10人が作業して1トンの収穫を得られると仮定します。
農業に人もお金もかけていないので、土地生産性も労働生産性も低い状態です。
①労働を集約
①の矢印をみてみましょう。
10人で働いていたところを、20人にしてみます。
そうすると、やらなければいけない業務は変わりませんが、隅々まで耕すことができるので、収穫量はアップしそうですね。
同じ土地で、収穫量は2トンになって、土地生産性が上がるということになります。この場合、1人あたり0.1トン生産しているので、労働生産性は変わっていないですね。
このように、労働力を集約させる場合は簡単です
②同じ面積に資本を集約
資本の集約を考えるときは、2パターンに分かれます。
まずは、同じ面積に資本を集約するパターンです。
肥料をあげげて収穫量はアップしそうですし、コンバインなどの機械を導入すれば、人がやる仕事は減るので労働生産性も高めることができます。
つまり、グラフ上では右斜め上に上がっていきます。
③資本を集約して人数を減らす
資本を集約すれば、人がやる仕事は減らすことができることがわかりました。
ということは、同じ面積でも仕事している人数を減らすことができそうですね。
機械化にお金を費やして、一人で耕す土地を広くすることに特化させれば、労働生産性を爆発的に上げることができそうです。
先ほどのグラフでは、5人で農業をすることができるようになりましたが、収穫量は1トンのまま変わっていないという状況になります。
このように、それぞれの要素を集約すると、どのように生産性が変わっていくかを漠然とイメージしておいてください。
各地域の農業生産性
粗放的農業に労働力や資本を集約させることができれば、生産性が上がることがわかりました。
そこで、このパターンに実際の地域を当てはめて考えてみましょう。
アフリカ
発展途上国の多いアフリカは、農業にお金をかけることも難しく、砂漠が多いため土壌が痩せているという問題があるので、生産性は低い粗放的な農業になります。
アジア
アジアの特徴はなんといっても圧倒的な人口です。
面積はそんなに大きくないので、多くの人手を投入して狭い農地からできるだけ農作物を手に入れようという農業がされています。
ということは、先ほどの ① の矢印、土地生産性が高く、労働生産性は低いという特徴を持っているわけです。
ヨーロッパ
ヨーロッパは、昔から技術が発展しているため、資本を集約した農業を行っています。
さらに、国土面積自体も小さい国が多いので、資本も労働力も集約した農業ということになります。先ほどの矢印では ② に相当しますね。
新大陸(南北アメリカ、オーストラリア)
南北アメリカやオーストラリアは、広大な土地を持っているのが特徴です。
トラクターなどの大型機械を導入して、少ない人数で広大な農地を耕しているわけです。
先ほどの矢印では ③ にあたる人数を減らすことに特化したパターンです。
ただし、アメリカは土地生産性の高い稲作をしている地域があったりと、色々な工夫を施していて、ヨーロッパに近い特徴を持っているので注意してください。
イメージとしては、次の図のような関係です。
この関係を覚えておくと、テストでも生かせることが多いので、頭に入れておきましょう。
農業の集約度と生産性のまとめ
いかがだったでしょうか。
集約度や粗放的といった普段あまり聞かない単語が出てきて嫌になる人も多いかと思いますが、しっかりと意味を考えていけば簡単に理解出そうですよね。
というわけで、最後に農業の集約度と生産性についてまとめておきます。
集約度:ある土地にどれだけ労働力や資本をつぎ込むか
- 労働集約度:土地に対してどれだけ人数をかけているか
- 資本集約度:土地に対してどれだけ資金をつぎ込んでいるか
生産性:労働力や資本を集約した結果として生産性が上がる
- 土地生産性:単位面積あたりの生産量
- 労働生産性:農民1人あたりの生産量
地域ごとの特徴
- アフリカ:粗放的農業
- アジア:土地生産性が高い
- ヨーロッパ、アメリカ:労働・土地生産性が高い
- 新大陸:労働生産性が高い
高校地理の農業を学ぶ上で、集約度や生産性という考え方は非常に大事です。
各地域の農業を覚えていく際にも度々出てくる考え方なので、この記事で完璧に理解しておきましょう。
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