【まとめ】高校地理の農業区分を2つの要素でわかりやすく簡単に覚える方法!
どうも、ひろです。
今回は、高校地理の中でもかなり重要な分野である農業を攻略していこうと思います。
農業の分野は必ずと言っていいほどテストに出題されますが、覚えることが多くて複雑ですよね。
でも、農業をするのは人ですから、複雑に見える中にも必ず理由が隠されています。
つまり、隠された理由を順番に理解していくのが、簡単農業を攻略するポイントなのです。
それでは、複雑な農業に隠された理由を一緒に考えていきましょう。
農業の立地条件
まずは、基本中の基本である立地条件から考えていきます。
授業ではそんなに意識することなくサラッと扱われることも多いですが、なぜそこで農業が営まれているのかというのは、農業を理解する上で一番基本的なことなので、ここでしっかり扱っていきます。
さて、一口に農業と言っても、みんな何も考えずに農業を行っているわけではないですよね。
例えば、その土地の気候にあった作物を育てる、できるだけ利益の出る方法で育てる、など様々な理由があります。
これらの理由を簡単に分類すると3つに分けることができます。
農作物も家畜も生き物なので、気温や降水量や土壌などの自然条件の影響を強く受けます。
それに加えて、その地域の食文化や輸送距離といった社会条件・輸送条件の影響も受けます。厳密には輸送条件は社会条件の一部ですが、輸送距離といった条件は影響が大きいので切り離して考えています。
農業区分など詳しく考えていくときにも、この3つの条件が重要になってくるので、しっかり押さえておいてください。
生産性と集約度
次は、どれだけ農業が効率的に行われているかに注目してみましょう。
農業の効率性を測る指標は、生産性と集約性の2つがあります。
生産性
- 土地生産性:単位面積あたりの生産量
- 労働生産性:農民1人あたりの生産量
集約度
- 労働集約度:土地に対してどれだけ人数をかけているか
- 資本集約度:土地に対してどれだけ資金をつぎ込んでいるか
生産性と集約度は、高校地理で農業について考える上で非常に重要な考え方なので、いまいちイメージが掴めない人は次の記事を読んで確認してみてください!
ちなみに、集約度が高いか低いかで、次のように呼び名を分けることができます。
- 集約的農業
農地に多くの労働力や資本を投下する農業
- 粗放的農業
農地にあまり労働力や資本を投下しない農業
この2つの区別をつけておきましょう。
農業地域の分類
さて、それではそろそろ世界中の農業について見ていくことにしましょう。
世界中の農業は、大まかに分類すると、次の3つに分けることができます。
この分類は、人類の歴史を考えるとスッキリするので、歴史を見ていきましょう。
- 自給的農業
- 商業的農業
- 企業的農業
長い歴史の中で、人類は農業をするようになったわけですが、時代が進んでいくにつれて農業の目的も変わってきました。
農業の始まりは約1万年前です。
それまでは、狩猟・採集によって食べ物を確保していましたが、農耕や牧畜ができるようになって、人々は一定の地域にとどまって生活することができるようになりました。
この段階では、まだ生産した物を自分たちで食べるという自給的なものでした。
このように、自分たちで作った物を自分たちで消費するような農業形態を自給的農業といいます。
大昔からある農業形態ということで、発展途上国の多いアジア〜アフリカ、南米のアマゾンのあたりに多く分布しています。
続いての変化は、18世紀に起きた農業革命です。産業革命と同時に、技術が発展し、人口も増えたことで農作物の需要が増えました。
そこで、自分たちだけが消費するのではなく、市場で売ることを目的に農業が行われるようになります。
これを、商業的農業と言います。
農業革命はヨーロッパで起きた話なので、当然ヨーロッパに多く分布しています。
そして3番目の変化は、20世紀初頭から起きた農業の産業化です。
商業的農業がさらに大規模化し、大量の資本や最新技術を投入することで生産性を圧倒的に高めた農業形態ということになります。
新大陸の広大な土地を生かして大規模経営されていることが多いので、南北アメリカやオーストラリアに多く分布しています。
世界の農業地域区分
というわけで、3種類の農業形態を踏まえて、世界の農業分布を見ていきましょう。
アメリカの地理学者であるホイットルセーは、次の5つの基準をもとに、世界の農業を13種類に分類しました。
- 作物と家畜の組み合わせ
- 生産方法
- 労働力や資本の集約度
- 生産物の消費の仕方
- 農業の規模
これを覚える必要はありませんが、何を作っているのか、どうやって作っているのか、誰が消費するのかによって分類していったのだなと思っておいてください。
ちなみに、高校の地理として習う農業区分は、ホイットルセーの考えた農業区分そのままではなく、一部改良を加えた物となっています。
高校の地理で出てくる農業区分の分布はこんな感じです。
このまま一気に覚えるのは大変だと思うかもしれませんが、順番に解説していくので大丈夫です。
高校の教科書では、自給的農業・商業的農業・企業的農業という3つの分類に分けて学習していきますが、もともとホイットルセイーが考えていた要素を意識しながら勉強していくのが良いです。
ホイットルセーの要素とは、気候(自然条件)と社会条件の2つです。
このページの一番初めでも出てきたやつですね。
土壌などの自然条件は結局気候によって変わることが多いので、気候に特に注目していきましょう。
気候
気候は4つに分けることができます。
- 農業不可能地域(Bw、E)
- 乾燥、寒冷地域
- 湿潤地域(低緯度)
- 湿潤地域(中緯度)
砂漠気候と寒帯は、農業ができないというのは想像できると思います。
重要なのは、後ろの3つです。
ホイットルセーはまず、作物が栽培できない地域(乾燥、寒冷地域)に注目しました。この地域では、作物が育てられないので家畜の飼育に特化しています。
湿潤地域は、作物を育てることができます。
低緯度地域では熱帯の作物を、中緯度地域では作物に加えて家畜を組み合わせた農業が行われています。
社会条件
農業は人間がするので、気候以外にもその地域に住んでいる人間によっても性質が変わってきます。
ホイットルセーは次の3つに注目しました。
- 西洋 or 東洋
- 先進 or 発展途上
- 人口密度、都市からの距離(輸送条件)
西洋と東洋、先進と発展途上は同じようなことですが、文化や技術が違うため同じような気候条件でも育てている作物や農業形態は大きく変わってきてしまいます。
また、人口密度に関しては必要としている食料の量が変わりますし、市場からの距離は新鮮な野菜の生産が必要などと求められる役割が変わってくるのです。
以上が、農業を考える上でとても大事な2つの要素です。
単純に自給的なのか商業的なのかを考えるだけではなく、気候と社会条件という2つの要素を考えながら分類を見ていきましょう。
自給的農業
まずは、自給的農業から見ていきます。
自給的農業とは、その名の通り自分たちが生活で消費するために作物を作る農業でしたね。
各農業の詳しい説明は、以下のリンクから確認してください!
ユーラシア大陸・アメリカ大陸の北部を除いて主に低緯度地帯に集まっていることが地図からわかると思います。
ヨーロッパ、新大陸を除いたアジアからアフリカ、南アフリカに多く分布しています。
これらの地域では技術が比較的遅れていることが多く、自給的な農業を伝統的に行ってきているからです。
自給的農業は主に3つの組に分けることができます。
乾燥・寒冷地域(遊牧、オアシス農業)
まずは、農作物を育てるのには厳しい環境である乾燥地域・寒冷地域です。
主にこれらの地域では、農作物を生産するのは難しいので、伝統的な遊牧が行われています。
アフリカのサハラ砂漠や中国のゴビ砂漠などが乾燥地域の例です。
また、寒冷地でも植物の生育は難しいのでトナカイなどの遊牧が行われています。
一方で、灌漑設備の発達やオアシスの周りでオアシス農業も発達しています。
地図を見ると遊牧とオアシス農業が隣接しているのがわかるのではないでしょうか。
人口密度が低い地域(焼畑農業、粗放的定住農業)
アフリカや南米、東南アジアの一部の熱帯地域では、雨が大量に降り土地があまり肥沃ではないという特徴がありました。
このような地域では、人口密度があまり高くなく、粗放的な農業が行われてきました。
植物を焼いた灰を肥料にして数年間耕作をし、10年以上放置して(休耕期間)植生の回復を待つ焼畑農業が行われています。
近年は人口増加の影響により休耕期間が減少し、土地がどんどん痩せていってしまうという環境破壊が問題になっています。
一方で、周りより土地が肥沃であったり、交通の便や水へのアクセスが良いといった理由から、焼畑農業のように農業をする土地を変えて移動するよりもその場に止まっていたいという地域もあります。
そのような地域では、人々は定住して農業を行なってきました。
しかし、土地が痩せているといるという根本的な特徴は変わらないため、どうしても粗放的な農業になってしまいます。
これが、粗放的定住農業です。
人口密度が高い地域(集約的畑作/稲作農業)
人口密度が以前から高かった東アジア、東南アジア、南アジアでは、多くの人口を支えるために集約的な農業が昔から行われています。
集約的畑作農業と集約的稲作農業がありますが、違いはシンプルで作る農作物が何かだけです。
アジアの人々にとって、主食である米は栄養価が高いので、作ることができるのならば是非とも作りたい作物です。
しかし、米は水田で作るため多くの降水量が必要になります。
つまり雨が多い(具体的には年間1000mm以上)地域では、集約的稲作農業が行われ、降水量が年間1000mmに満たない地域では米を育てることができないので集約的畑作農業が行われているのです。
商業的農業
次に確認するのは商業的農業です。
商業的農業は、産業革命以降主にヨーロッパで発達してきた販売を目的とした農業でした。
各農業の詳しい説明は、以下のリンクから確認してください!
ヨーロッパで発達した商業的農業は、そのまま移民が新大陸に持っていったため、アメリカなどの新大陸でもよくみられる農業形態です。
自給的農業を営んでいたアジアやアフリカなどの地域に比べて、先進的なヨーロッパはより現金主義なのです。
商業的農業は、気候と市場との距離によって行われている農業形態が変わってきます。
まず、気候との繋がりで真っ先に気付くのは、地中海性気候で行われている地中海式農業です。
この2つの分布はほとんど一致しています。
夏に乾燥するという大きな特徴がある地中海式気候では、夏の乾燥に強い作物を育てる必要があるので気候区分と農業形態の分布が一致しているのです。
続いて、わかりやすいのが園芸農業です。
園芸農業は、市場との距離が重要な典型的な例で、人口が集中した都市に新鮮な野菜などを届けるために大都市の近郊で行われています。
残った混合農業と酪農は、単純に気候の違いです。
ウクライナあたりに分布する肥沃なチェルノーゼムを生かして作物と肉用の家畜などを混合して農業を行うのが混合農業です。
混合農業の地域よりももう少し緯度や標高が高い地域では、冷涼で植物の栽培が難しくなってくるため、干し草を栽培して乳牛などの酪農が盛んに行われています。
企業的農業
最後は、企業的農業を確認します。
企業的農業は、商業的農業がさらに発展して利益の高い作物や家畜を大量に生産し、利益を追求する農業でした。
各農業の詳しい説明は、以下のリンクから確認してください!
企業的農業は、経営規模が大きく機械による効率化が凄まじいため、自給的農業に比べて生産性がとんでもなく高いです。
つまり、もともとあった自給的な農業のエリアを侵食してきたというように考えましょう。
企業的農業というふうに一括りに表現をしていますが、侵食される地域によって2つに分けると理解しやすくなります。
熱帯地域(プランテーション農業)
まず、わかりやすいのがプランテーション農業です。
これは、熱帯でしか生産することができない作物を中緯度地域に住んでいるヨーロッパ人のために大量生産する農業という風に見ることができます。
もともと、焼畑農業を行っていたような熱帯に点在するのがプランテーション農業なわけです。
熱帯以外(企業的穀物・畑作農業/牧畜)
企業的牧畜は、なんだか強そうな名前をしていますが、家畜だけを育てるという特徴だけを見れば遊牧と同じです。
新大陸の中で乾燥が厳しい地域で作物を育てることができない地域に進出していったのが企業的牧畜です。
一方で、企業的穀物・畑作農業は、企業的雨牧畜に比べると湿潤で小麦などの作物を大規模に育てることができる地域に分布しているというわけです。
農業区分のまとめ
いかがだったでしょうか。
複雑そうに見える農業区分もそれぞれの特徴を分けて考えていくと簡単に理解することができます。
それぞれの農業の詳しい内容は、しっかり確認しておいてくださいね。
それぞれの農業区分をクリックするとその農業区分をさらに詳しく解説した記事に行くことができます。
農業区分 | 要素 | ||
気候 | 社会条件 | ||
自給的農業 | 遊牧 | 乾燥、寒冷 | 発展途上、人口密度低め |
焼畑農業 | 湿潤(低緯度) | 発展途上、人口密度低め | |
粗放的定住農業 | 湿潤(低緯度) | 発展途上、人口密度低め | |
オアシス農業 | 乾燥 | 発展途上 | |
集約的稲作農業 | 湿潤(低緯度〜中緯度) | 東洋、人口密度高い | |
集約的畑作農業 | 湿潤(低緯度〜中緯度) | 東洋、人口密度高い | |
商業的農業 | 混合農業 | 湿潤(中緯度) | 西洋 |
酪農 | 湿潤(混合農業より高緯度側) | 西洋 | |
園芸農業 | 湿潤(中緯度) | 西洋、大都市近郊 | |
地中海式農業 | 湿潤、夏季乾燥(中緯度) | 西洋 | |
企業的農業 | 企業的穀物・畑作農業 | 乾燥〜湿潤(中緯度) | 先進 |
企業的牧畜 | 乾燥 | 先進 | |
プランテーション農業 | 湿潤(低緯度) | 先進 |
こうやってみると、それぞれの農業区分において何が共通していて何が違うのかが一目瞭然だと思います。
農業は、テストでもよく問われる非常に重要な単元なので、しっかり頭に入れておいてくださいね。