焼畑農業の仕組みとは?メリットや栽培される作物をわかりやすく解説!
どうも、ひろです。
今回は、焼畑農業についてまとめていきたいと思います。
焼畑農業について漠然としたイメージを抱いている方も多いでしょう。
今回の記事では、なぜ焼畑を行うのかという仕組みから、問題点もで一挙に解説していきます。
焼畑農業の特徴
焼畑農業とは、その名の通り元々生えていた草木を焼き払って行う自給的農業で、主に熱帯や山間部でみられます。
草木を焼き払うことでできた灰を肥料として利用しているわけです。
焼畑農業の理解を深めるために、灰の性質をもう少し詳しく考えてみましょう。
- アルカリ性
- リン酸やカリウムを含んでいる
もちろんリン酸やカリウムといった植物の生育に欠かせない栄養分を補うことができるというのも大事ですが、地理の勉強において重要なのはアルカリ性という性質です。
化学ではないので詳しい話はしませんが、灰はアルカリ性の性質があります。
熱帯の土壌は、ラトソルと呼ばれる酸性の土壌が多いので、この土壌を中和させることで、植物にとって生育しやすい環境に整えてあげるという効果があるのです。
なので、最初に説明したように、熱帯でよく見られる農業のやり方というわけです。
熱帯に関しては、次の記事を参考にしてください。
熱帯は土壌が痩せている場合も多いですが、雨が多く降って、雑草が生茂るという特徴をうまく生かして農業をしているのですね。
ただ、元々ラトソルは痩せた土壌なので、一度 焼畑をしてしまうと土の中の栄養分はどんどん下がっていく一方です。
そこで、土壌の栄養分が下がってきた段階で、一度 休耕(農作業をやめること)し、自然に植物が生えてくるのを待ちます。
10年以上休ませることで、段々と植物が生えてくるようになると、再び火入れして焼畑農業を再開することができるようになるのです。
- 火入れ
- 農作業(種まき〜収穫)
- 休耕
この3工程を繰り返すわけですが、休耕している間は別の土地で農作業をします。
ということは、移動しながら焼畑をしているということになりますね。これが、焼畑農業の実態になります。
一つの土地に対して、あまり作業をしないので、収穫量はそこまで多くないです。
なので、焼畑農業は労働生産性も土地生産性も低い粗放的な農業ということになります。
生産性や粗放的という指標については、次の記事で詳しく解説しています。
焼畑農業は、基本的に農地を移動しながら行う農業ということでしたが、もう少し土壌が肥沃になってくるとどうでしょう。
土壌が元々肥沃ということは、土地を休耕させて別のところに移動するという必要性も薄れてきます。
そうすると、同じ場所にとどまって畑作をした方が良いですよね。
このように、焼畑農業と比べて、より定住性を高めた農業を粗放的定住農業と言います。
粗放的定住農業は、教科書によっては焼畑農業と合わせて「伝統的農業」とまとめてしまっているものもあるので、一緒に見ていくことにします。
焼畑農業と粗放的定住農業を神経質に区別する必要はあまりないです。
焼畑農業の分布
というわけで焼畑農業が実際にどのように分布しているのか、確認していきましょう。
赤道付近の低緯度地域に集中していることがわかると思います。
熱帯の分布と見比べてみると、関係性は一目瞭然だと思います。
覚えておきたい地域をまとめておきます。
焼畑農業
熱帯の地域とほぼ重なっています。
- 東南アジア〜ニューギニア島
- アフリカの熱帯
- アマゾン川流域
この3つを抑えておけば良いでしょう。
焼畑はかなり大部分で行われているので、熱帯の農業といえば焼畑と頭に浮かぶようにしておきましょう。
粗放的定住農業
基本的には焼畑農業と区別する必要はないのですが、2つだけ注意しておきたい地域があります。
- メキシコの南部周辺
- アンデス地方
地図をみると、この2つの地域は粗放的定住農業が行われているのがわかると思います。
この2つの地域に共通しているのはなんでしょう。
それは古くから栄えた文明があったことです。
- マヤ文明(メキシコ南東部)
- インカ帝国(アンデス地方)
これらの文明を聞いたことがあるという人も多いと思います。有名な文明ですね。
この辺りはトウモロコシやジャガイモなどの作物の原産地になっています。
インディオなどの先住民族が、古くから伝統的な粗放的定住農業を行っていたわけです。
先住民族と関連づけて頭に入れておくと良いでしょう。
焼畑農業で栽培される作物
さて、続いて焼畑農業で栽培される作物について見ていきましょう。
人間が生きていくためには、主食となる炭水化物が必要です。つまり主食になるものを最優先にして作っているわけです。
痩せた土地でも栽培することができる、イモ類や雑穀などがそれにあたります。
イメージとしては、イモ類の方が穀物よりも環境に強いという感じです。
熱帯雨林気候(Af)とサバナ気候(Aw)によって育てられている作物に若干の違いがあるので、気候区ごとに見ていきます。
熱帯雨林気候の作物
まずは、熱帯雨林気候です。
熱帯雨林気候では、イモ類の栽培が中心です。
痩せた土地でも収穫できる上に、1年に何度も収穫できるというとても優れた作物です。
- キャッサバ
- タロイモ
- ヤムイモ
タピオカの原料にもなるキャッサバは、アマゾン盆地が原産です。
そして、タロイモとヤムイモは、東南アジアが原産地です。
日本ではあまり馴染みがないと思いますが、タロイモは里芋に、ヤムイモは山芋に似たイモです。
これらのイモ類は、熱帯雨林気候で満遍なく作られるのですが、特にアフリカの熱帯地域(ナイジェリアやコンゴ民主など)で多く作られているということを押さえておいてください。
ナイジェリアなどは人口が多いので、貴重な主食として重宝されているわけです。
サバナ気候の作物
続いてサバナ気候ですが、雑穀が多く育てています。
- モロコシ
- アワ
- ヒエ
- キビ
このように、米や小麦や大麦以外の穀物を雑穀と言います。
アジアやアフリカを中心に主食となっています。
もちろん、完全にAfがイモ類、Awが雑穀というわけではありませんが、大体このように作物が作られていると覚えておきましょう。
粗放的定住農業の作物
基本的に焼畑と同じと思って良い粗放的定住農業でしたが、生産される作物に関しては、プラスアルファで知識を入れておくと良いです。
メキシコ周辺・アンデス地域
まずは先ほど触れた、メキシコ周辺やアンデス地域で育てられている作物を紹介します。
- トウモロコシ
- ジャガイモ
- リャマ、アルパカ
この地域は、焼畑農業と違って、標高が比較的高い地域が多いので、通常の焼畑を行っている地域に比べて涼しいです。
その気候を生かして、トウモロコシやジャガイモの生産が行われています。
また、アンデス高地では、リャマやアルパカと言った家畜を飼育しているというのも特徴の一つです。
東南アジア・西アフリカ
さらに、粗放的定住農業は、東南アジアと西アフリカにも行われている地域がありました。
これらの地域はただ一つ、商品作物というキーワードを覚えてください。
焼畑農と同じく自給的な作物の栽培に加え、商品作物が栽培されています。
商品作物に関しては、プランテーション農業と関わりが深いので次の記事を参考にしてください。
具体的な作物としては、次の2つを頭に入れましょう。
- ココヤシ(東南アジア)
- カカオ(東南アジア)
粗放的定住農業は、自給的農業+商品作物ということになります。
焼畑農業のメリット・デメリット
さて、焼畑農業を学習する上で、もう一つ重要なお話があります。
近年では、焼畑農業が環境問題を引き起こしているということも指摘されていて、環境問題と絡めてテストで出題される可能性もあります。
なので、焼畑農業のメリット・デメリットを考えていきましょう。
焼畑農業のメリット
焼畑農業の特徴をもう一度思い出してみましょう。
はじめの方で、焼畑農業は粗放的であるという話をしました。
粗放的ということは、生産性が低いので、一見デメリットに見えるかもしれません。
しかし、人工的な肥料を投入せずに、地力が自然に回復するのを待つということは、お金をかける必要もないし、環境を生かした理にかなっている方法という見方もできます。
さらに、雑草で生い茂った土地を、焼き払うだけで簡単に整備することができるのは楽チンです。
- 手間がかからない
- 環境を生かした持続可能な農業
昔ながらの伝統的な方法には、それなりの知恵が詰まっているわけです。
焼畑農業のデメリット
しかし、近年では焼畑農業のデメリットにも注目が集まるようになりました。
焼畑農業は、長い間行われてきた方法なのに、なぜ近年になって問題になることが増えたのでしょうか。
それは、開発と人口の増大が原因です。
開発の影響
開発により道路が整備されたり、畑の周りに家が建ったりという変化がおきました。
新しく土地を利用していくというのは良いことですが、問題を引き起こすこともあります。
昔は、広大な農地があったため、焼畑をして休耕してというサイクルをして移動していくことがなんの問題もなく行うことができていました。
しかし、道路が整備されたりして、農地に利用できる面積が現象してしまうと、移動して土地を休ませることが難しくなってしまうようになります。
また、畑の周辺に家が建つことによって、火入れをする際に出てくる煙が人の生活を邪魔するということも起きるようになってしまいました。
人口増加の影響
人口が増えてきたというのも問題を引き起こす原因になります。
人口が増えてくるということは、食料も多く必要になるということです。
そうすると、農地を十分に休ませる時間もなく、次の食料を作り始めなければいけません。
地力が回復されるのには一定の期間が必要なため、焼畑のサイクルが早まるとどんどん土地が痩せていってしまいます。
こうなってしまうと焼畑のメリットであった持続可能という特徴は失われてしまうわけです。
このような無理のある焼畑農業を続けていくと、砂漠化が進行したり、雨によって簡単に土砂災害が起こるようになったりと多くの環境問題を引き起こす原因となってしまいます。
- 火入れによって発生する煙
- 砂漠化、土砂災害などの環境問題を引き起こす
このようなデメリットが解消されて、環境に負担のかからない農業にしていく必要がありそうですね。
焼畑農業のまとめ
いかがだったでしょうか?
焼畑農業を攻略するときは、焼畑を行う理由を考えていくと理解しやすくなります。
というわけで、最後に焼畑農業についてのまとめをしておきます。
- 粗放的な自給的農業
- 灰を肥料に使う伝統的な手法
- 近年では環境問題も話題に
分布
◇焼畑農業
- 東南アジア〜ニューギニア島
- アフリカの熱帯
- アマゾン川流域
◇粗放的定住農業
- メキシコの南部周辺
- アンデス地方
作物
◇焼畑農業
- イモ類(Afに多い)
キャッサバなど - 雑穀(Awに多い)
◇粗放的定住農業(自給作物+α)
- トウモロコシ・ジャガイモ・リャマ・アルパカ(メキシコ、アンデス)
- ココヤシ(東南アジア)
- カカオ(西アフリカ)
まずは、なんと言っても焼畑農業が重要なので、焼畑農業の知識を重点的に押さえていきましょう。
粗放的定住農業は余裕があれば一緒に覚えておくと良いです。
農業区分についてまとめた以下の記事も読んでみてください。
Comment
たぶんグラフの赤と青が逆です
ご指摘ありがとうございます。
修正いたしました!