EUの加盟国の覚え方|地理受験者が絶対知っておくべき歴史や問題点を解説!
どうも、ひろです。
今回は、EUに関する知識をすべておさらいしていきたいと思います。
ヨーロッパの問題を扱うときに、EU無くして語ることは無理ですよね。
地理を勉強している人なら、EUの重要性はわかっていると思いますが、意外と知識が整理されていないと感じている人もいるのではないでしょうか。
この記事では、EUに関する知識をすべてまとめていきます。なので、もうEUに関する知識で悩まされる必要はありません。
というわけで、早速本題に入っていきましょう。
EU(ヨーロッパ連合)の歴史
今や多くのヨーロッパの国が加盟しているEUですが、初めは加盟国は6カ国しかありませんでした。
まずは、どうやってEU(ヨーロッパ連合)が成立して拡大していったのかについてお話しします。
ヨーロッパは戦争を繰り返し、2度の世界大戦の舞台になりました。
このような経験から、第二次世界大戦後はヨーロッパの国同士が再び争うことがないように、ヨーロッパでは統合が進められていきます。
1952年には、フランス・西ドイツ(当時)・イタリア・ベルギー・オランダ・ルクセンブルクの6カ国が集まって、石炭や鉄鋼といった戦争に使われる物資の生産や価格を共同で管理することを目的としたECSC(European Coal and Steel Community, ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体)が設立されました。
さらに、1958年には同じ6カ国が域内で関税を撤廃することや域外に共通の関税を課すことを定めたEEC(European Economic Community, ヨーロッパ経済共同体)と、原子力の利用や開発を共同で行うことを定めたEURATOM(ヨーロッパ原子力共同体)を発足させました。
1967年には、これらの3つの組織をまとめて、現在のEUの基礎となるEC(European Community, ヨーロッパ共同体)が設立されます。
というわけで、ECの原加盟国は、フランス・西ドイツ(当時)・イタリア・ベルギー・オランダ・ルクセンブルクの6カ国なのですが、ヨーロッパの主要国であるイギリスが入っていませんね。
イギリスは、この頃フランスやドイツなどに対抗して、域内で工業製品の関税を撤廃することを目的としたEFTA(ヨーロッパ自由貿易連合)を当時EECに加盟していなかったイギリス、オーストリア、スウェーデン、スイス、デンマーク、ノルウェー、ポルトガルの7か国で結成していました。
しかし、EFTAはECよりも規模が小さい国が多かったため、結局イギリスの目論見はうまくいきませんでした。
その後、徐々にEFTAから加盟国がECに移っていく形で、ECの規模が段々と大きくなっていきます。
1973年にはデンマーク・イギリス・アイルランドが、1981年にはギリシャ、1986年にはスペイン・ポルトガルが加盟しています。
そして1993年には、マーストリヒト条約によってECはEU(ヨーロッパ連合)になりました。
ついにEUの誕生です。
マーストリヒト条約とは、オランダのマーストリヒトで調印されたEU創設を定めた条約。
これにより、通貨統合や、共通の安全保障政策、加盟国の市民に居住地での地方参政権を与えるなど、政治・経済の両方で統合が進められました。
ここまでの流れを一旦まとめてみましょう。
年 | 出来事 |
1952 | ECSC発足(フランス・西ドイツ・イタリア・ベルギー・オランダ・ルクセンブルク) |
1958 | EEC, EURATOM発足 |
1967 | 3つの組織が合併しECが発足 |
1973 | デンマーク・イギリス・アイルランド加盟 |
1981 | ギリシャ加盟 |
1986 | スペイン・ポルトガル加盟 |
1993 | マーストリヒト条約 EC→EU(ヨーロッパ連合) |
EU加盟国の覚え方
1993年EUが誕生してから、着々と加盟国を増やして拡大してきました。
EUがどのように加盟国を増やしてきたかというのは、ヨーロッパを知る上で欠かせない知識です。
ここでは、ECがEUになった1993年から、加盟国の変遷を確認していきます。
年 | 出来事 |
1995 | オーストリア・フィンランド・スウェーデン加盟 |
2004 | ポーランド・チェコ・スロバキア・スロベニア・ハンガリー・エストニア・ラトビア・リトアニア・マルタ・キプロス加盟 |
2007 | ルーマニア・ブルガリア加盟 |
2013 | クロアチア加盟 |
2020 | イギリス脱退 |
このような変遷を経て2021年現在ではEUに加盟している国は27カ国に上っています。
1995年にはほとんどの西ヨーロッパの国がEUに参加するようになったことがわかると思います。
ちなみに、2004年に多くの国が加盟しているのは、1990年代に東ヨーロッパの国々の社会主義体制が崩壊し、民主化したことにより多くの東ヨーロッパ諸国がEU加盟を希望するようになったからです。
このように地図にまとめてみると、EUの加盟国がどのように広がっていったかがよくわかるのではないでしょうか。
加盟していった順番は大まかに次のように覚えておきましょう。
西欧 → 南欧 → 北欧 → 東欧
南欧と言ってもイタリアはすでに加盟していたり、オーストリアが他の東欧の国よりも早く加盟していたり完璧ではないですが、位置と関連づけて覚えておきましょう。
EUのメリット
異なる国がEUという1つの枠組みを作っているのは、何らかのメリットがあるはずですね。
ということで、どんなメリットがあるのか具体的にみていきましょう。
- 域内関税の撤廃(加盟国間の貿易では関税がかからない)
- 域外共通関税の設定(域外の国と貿易するというは共通の税率の関税をかける)
- 共通通過ユーロの導入
- 資本や労働力の移動の自由化
- 共通農業政策
このようにEU加盟国内でヒト、モノ、カネ、サービスが国境を超えて自由に移動できるようになったことで、EU内の貿易や交流が盛んになりました。
特に、農業が盛んな地中海沿岸の地域から北ヨーロッパへ野菜や果物が輸出されたり、ドイツのような先進工業国から他の国に工業製品が輸出されたりと、各国の特色を生かして貿易が活発に行われています。
1995年にはシェンゲン協定が発行され、EU加盟国間の国境管理を無くし、人が自由に移動できるようになったことで、国境を超えて通勤や買い物などが簡単にできるようになりました。
シェンゲン協定とは、EU加盟国間の国境で、パスポートなしで自由に通行できるようにする取り決めのこと。
このおかげで、鉄道や航空網の整備も進んでいることもあり、EU加盟国間の結びつきはとても強くなっているのです。
EUの共通農業政策
また、EUの重要な政策の1つに共通農業政策という仕組みがあります。
ヨーロッパは小さい国が多いので、アメリカなど広大な大地を利用した国から安い農作物が入ってくると、ヨーロッパの農業は打撃を受けてしまいます。
特に、農業の生産性が低い国ではより影響が出てしまいます。
これを守るために、主要な農産物に統一価格を設定し、EUが一括で買い揃えるという方法が取られています。
また、EU内で作った農産物をEU外に輸出するときは、EU外の農産物が安い国でも通用するように、差額を埋める輸出補助金というものを出しています。
域外から入ってきた安い農産物に輸入課徴金(関税)をかけて、そこから得たお金で輸出補助金などを捻出しているわけです。
このように、生産性の比較的高い国ではより生産量を伸ばし、生産性の低い国の農業も守られるようになっているおかげで、EU加盟国の食料自給率は上昇してきました。
しかし、次のような課題も抱えています。
- EUが農作物を高い価格で買い上げないといけないことから財政負担が大きい
- どこの国も守られているため農家の過剰生産が問題になっている
- 高い関税により域外との貿易摩擦が起きている
このような問題点があることも覚えておきましょう。
EUが抱えている問題
かなり結びつきが強そうな印象のあるEUですが、実はいろいろな問題を抱えています。
まず、EUには様々な事情を持った国が加盟しています。
例えば、工業を引っ張ってきたドイツと、1990年代まで社会主義体制が続いていた東ヨーロッパの国々では経済レベルが違います。
もちろん、関税のかからないEU加盟国内で安い労働力を得られるというメリットもあります。
しかし、安い労働力を求めて工業製品の生産拠点を経済レベルの低い東ヨーロッパに移す企業が増えると、労働力の高い主要国では失業率が高まったり、産業の空洞化といった現象が問題になってしまいます。
また、EU加盟国間の多くの国では国境管理が廃止されましたが、それによって移動が自由にできるようになる代わりに、不法入国や移民労働者が増えたりしてしまっています。
さらに、中東やアフリカなどの紛争地域からの難民の保護や受け入れ問題と言った課題もあります。
このように、良い面がたくさんあるEUにも、問題点が少なからずあるということは忘れてはいけません。
EUのまとめ
いかがだったでしょうか?
今回は、EUが拡大していった歴史や、EUの政策についてまとめてきました。
というわけで、最後にEUについてまとめておきます。
ECSC + ECC + EURATOM → EC →EU
- マーストリヒト条約:EU発足
- シェンゲン協定:域内の人の移動自由化
- 加盟国内でヒト、モノ、カネ、サービスが国境を超えて自由に移動できるようになった
- 共通農業政策
- 問題点もある(経済格差、難民受け入れ)
EUについて理解ができていると、ヨーロッパの産業なども理解しやすくなると思うので、しっかりEUについては理解しておくようにしてくださいね。