西岸海洋性気候(Cfb)の特徴は?具体的な国名もわずか2つのポイントで完璧に!
今回は、西岸海洋性気候について詳しく解説していきたいと思います。
2つのポイントを意識すれば簡単なんやで!
その2つのこととは、暖流と偏西風です。
これだけ言われても、正直意味がわからないですよね。なので、今回の記事ではなぜ暖流と偏西風が大事なのかも含めて説明していきます。
西岸海洋性気候(Cfb)の特徴は?
西岸海洋性気候とは、そもそもどのような気候なのでしょうか?受験テクニックも大事ですが、まずは定義を確認していきましょう。
- 最寒月平均気温 ー3〜18℃ (Cの要素)
- 最暖月平均気温 22℃未満 (bの要素)
- 降水 1年中湿潤 (fの要素)
これが、西岸海洋性気候の定義になります。一番寒い月の平均気温に加えて一番暖かい月の平均気温も気にしなければならないので少し大変ですね。
気温は、他の気候区分を判別するときにも必要になってくる情報ですので、次の記事内で解説している判別方法をまとめて覚えてしまいましょう!
ここまでの話をまとめると、
夏の暑さが厳しくないので過ごしやすそうですが、西岸海洋性気候にはどのような特徴があるのでしょうか?
暖流の暖かさを偏西風が運んでくるため、冬の気温が下がりにくく気温の年較差は小さいです。
暖流が地球上をどのように流れているかは、次の記事で解説しています。簡単に覚える方法も載せているので流れている場所がわからない人は是非見ておいてください。
暖流が流れているということは、夏は暑くなってしまうのではないかと思いますよね。
でも、西岸海洋性気候は比較的高緯度に位置しているため、夏もそんなに厳しい暑さにはならないのです。
『季節風?モンスーン? 風向きをわかりやすく覚える1つの法則!』の記事の中で解説したように、海は大陸に比べて温まりにくく冷めにくいので、海に近い西岸海洋性気候は気温の年較差が小さいのです。
これは、しっかり覚えておきましょう。
なんで年中雨が降るのかということも偏西風の影響を考えると説明できます。
偏西風によって海の水蒸気が陸地まで運ばれてくるからですね。しかも、偏西風というのは恒常風なので季節を問わず吹いてきます。ということは、もちろんどの季節でも雨がしっかり降るということになるのです。
恒常風とはなんぞや?偏西風ってなんで吹くの?っていう人は次の記事を読んでみてください。
西岸海洋性気候の分布の仕方は?
さて、西岸海洋性気候の特徴を理解したところで分布に、入っていきましょう。上の画像は、ロンドンの橋ですが世界的に有名な都市の多いヨーロッパにも多数分布しています。
割と世界中に分布しているように思えますが、共通点はどこでしょうか?
分布を考えるときも、基本的に暖流と偏西風の影響に着目していけばいいです。
まずは、簡単に説明しますね
基本、大陸の西岸で比較的高緯度(とくに北半球)
南半球は例外もあり
また、南半球は例外もあると言いましたが、南半球は北半球に比べて陸地の割合が狭いので、西岸海洋性の海洋性の方に注目していくと分かりやすくなります。
そもそも西岸海洋性気候の成り立ちというのは、
なので、必ずしも暖流と偏西風の影響がなくても、比較的高緯度で冬の気温があまり下がらないのならば、西岸海洋性気候に分類されるというわけです。そこらへんの細かい事情は個別で見ていきましょう。
ヨーロッパが最重要!
まずは、最重要なヨーロッパを見ていきましょう。
なぜ大事なのかというと、西岸海洋性気候のうちかなりの部分がヨーロッパにあるからです。さらに、ヨーロッパには人口の多い重要な都市がたくさんあります。だからヨーロッパが大事なのです。
ということで、ヨーロッパの分布に入っていきましょう。
西岸海洋性というくらいなので、ユーラシア大陸の西岸に分布していることがわかりますね。
図に示したように、暖流である北大西洋海流がかなり高緯度まで流れ込み、さらに暖流による温暖な空気を偏西風が大陸側に運んでくることによって、高緯度地域でも気温があまり下がらず、温帯の西岸海洋性気候になるのです。
地図の中に、北緯40度の線が書かれていると思いますが、北緯40度とはどのくらいなのでしょうか?
北緯40度は、日本でいうと秋田県あたりを通っています。
秋田県というと、本州のだいぶ北の方なので、日本で考えるとかなり寒そうですよね。
暖かそうなロンドンやパリでさえも秋田県より高緯度であるということがわかっていただけたでしょう。これが、暖流と偏西風の威力です。
スカンディナビア半島の西岸やアイスランドの首都であるレイキャビクなどは、かなり高緯度ですが西岸海洋性気候です。
まとめると、西ヨーロッパから中央ヨーロッパにかけてかなり広範囲が西岸海洋性気候になっているということになります。
北米を見てみよう
ユーラシア大陸の東側には西岸海洋性気候は分布していないので、北半球はあと北米を見れば終わりです。
北米には大まかに2箇所、西岸海洋性気候がありますね。
一つ目は、
にかけてです。
北米大陸の西岸には、高緯度に向けて暖流が流れています。
ちょうど、カナダ・アラスカの太平洋沿岸は近くを流れる暖流の影響をもろに受けて高緯度の割に気温が下がらない、まさしく西岸海洋性気候の定義通りの気候となっているのです。
でも、アメリカの東側にも西岸海洋性気候があるなぁ。なんでだろう?
二つ目は、少し特殊なパターンです。
ことに気付いたと思います。
これは、ここにあるアパラチア山脈という古期造山帯の影響なのです。
この周囲は、温暖湿潤気候となっています。しかし、この地域はアパラチア山脈のせいで標高が高くなり、気温が周りよりも下がってしまいます。
つまり、本来は気温がもう少し高い温暖湿潤気候になるはずだったが、標高が高いため気温が下がってしまい西岸でも海洋性でもないが、西岸海洋性気候になってしまったというわけです。
ちなみに、標高が上がるとどれくらい気温が下がるかの割合のことを気温の逓減率と言います。
詳しくは、次の記事内で解説しています。時間がある人は読んでみてください!
ちょっと特殊でしたが、標高が高くて気温が下がってしまうという現象はよくあるので一度理解できれば簡単ですね。
これで北米も完璧です。
南半球を考察!
さて、北半球を攻略できたので次は南半球に移っていきましょう。南半球は、西岸海洋性気候はほんの少ししかないので一気に見ていきます。
地図を見ると、
- 南アフリカの南東端
- オーストラリアの南東端、ニュージーランド
- チリの南部
に分布していますね。このように、南半球では暖流が西岸に流れているというよりは、偏西風が直接当たる地域と考えることが大切です。
西岸というよりも、海洋性という方に注目しましょう。
南半球は海洋の占める割合が高く、特に偏西風が吹いてくる中緯度地方は、陸地が少し飛び出しているくらいで、ほぼ海です。
なので、気温の変動が少なく、気温の年較差が小さい西岸海洋性気候になるのです。
ちなみに、メルボルンの東側を暖流が流れているため、海の温度が高くオーストラリアは南東端が西岸海洋性になっていることも覚えておきましょう。
また、南アフリカの南東端はただ偏西風が当たるというよりも、古期造山帯のドラケンスバーク山脈のせいで、周囲の気候よりも気温が下がって西岸海洋性気候になっているということも頭に入れておきましょう。
また、東南アジアの赤道直下の地域にも少し西岸海洋性気候が見られますね。
こんなところに西岸海洋性気候が分布しているのは不自然です。となると、原因はやはり山のせいになりそうですよね。
実は、カリマンタン島とニューギニア島の中心部には山があって気温が下がってしまうので、赤道直下でも西岸海洋性気候になっているのです。
これで、南半球側も分布はすべて解説し終わりました。ということで、もう西岸海洋性気候の分布は完璧ですね。
最後に、西岸海洋性気候になる地域をまとめておきます。
- ヨーロッパの高緯度、西岸
- カナダ・アラスカの太平洋沿岸
- アフリカ南部の東端
- オーストラリの南東部、ニュージーランド
- チリの南部
これで、西岸海洋性気候の分布に関するお話は終わりです。
西岸海洋性気候の植生と土壌は?
分布の次は、気候区分を学習する上で大事になってくる植生と土壌の話です。
温帯は、生物にとって過ごしやすい気候ですので、植物もたくさん生えています。気合を入れていきましょう。
植生はブナ気候!?
それでは、早速植生を考えていきましょう。
西岸海洋性気候は、分布域がブナの生育域と大体一致するので「ブナ気候」とも呼ばれています。
では、ブナとはどんな植物なのでしょうか?
ブナとはこのような木のことです。落葉広葉樹に分類されますね。
落葉広葉樹とは、季節によって葉を落とす木のことです。冬になると落葉するものや、乾季になると落葉するものがあります。
日本でもよくみられる、ブナやコナラ(オーク)などが落葉広葉樹に分類されます。
コナラは、このようなよく見るドングリですね。
また、標高が高い地域では落葉広葉樹と針葉樹の混合林が中心になります。
土壌は植生の影響を受ける!
植生がわかってきたところで、土壌についても考えていきましょう。
土壌は植生の影響を考えればいいので、植生が理解できている人にとっては簡単です。
夏には、たくさんの葉をつける森林が、冬になるとすべて落葉するため、森林では落ち葉が豊富に落ちていることになりますね。
ということは、その落ち葉が腐植していくので栄養分の高い土壌になりそうです。
この栄養分が豊富な土壌のことを褐色森林土と言います。名前はしっかり抑えるようにしておきましょう。
西岸海洋性気候の農業は?
植生、土壌ときたら人間生活についても見ておきたいですね。
先ほど、西岸海洋性気候の特徴として気温の年較差が小さいというのを挙げました。
気温の年較差が小さいということは、人間にとって活動しやすいです。ということは、人が集まってきて、人口密度が高いということになります。
人口密度が高いので、同時に農業も盛んになるはずです。
それでは、農業を見ていきましょう。
西岸海洋性気候では、簡単にいうと2種類の農業が行われています。
- 低地:混合農業
- 高地:酪農
もともと土壌は肥沃なため、農業はやりやすいです。低地では農地を開発して、小麦の栽培や牧草地になっています。
家畜の餌を作って、牛や豚を飼育するということも行われていて、作物の栽培と家畜の飼育という2つのことを合わせていので混合農業と言います。
標高が高くなってくると、寒くて作物の栽培ができません。そんな地域では、冷涼な気候に適した酪農が行われています。
それに加え、花などの園芸農業を行っている地域もあります。
- 低地:混合農業(小麦、牧草+牛、豚)
- 高地:酪農(牛)
- 園芸農業
このように、標高に応じて2種類の農業が行われているということを覚えておけば西岸海洋性気候の農業はオッケーです。
西岸海洋性気候(Cfb)のまとめ
いかがだったでしょうか?
西岸海洋性気は人間が多く住んでいるので覚えることが多いように思えますが、結局、暖流と偏西風の2つの影響に起因していること分かっていただけたのではないでしょうか。
ということで、最後に西岸海洋性気候で覚えておかなければいけないことをまとめます。
分布:基本的に大陸西岸、高緯度側に分布
- 西ヨーロッパ〜中部ヨーロッパ
- カナダ・アラスカの太平洋沿岸
- アフリカ南部の東端
- オーストラリの南東部、ニュージーランド
- チリの南部
特徴
- 気候:夏は冷涼、冬は比較的暖かく、気温の年較差は小さい
- 植生:落葉広葉樹(ブナ、コナラ)、一部針葉樹との混合林
- 土壌:肥沃な褐色森林土
農業
- 低地:混合農業(小麦、牧草+牛、豚)
- 高地:酪農(牛)
整理すると覚えなければいけないことはそこまで複雑ではないですね。
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というわけで、今回は西岸海洋性気候の解説でした。しっかり復習しておいてください。
Comment
はじめまして。
「海は大陸に比べて暖まりにくく冷めやすいので、海に近い西岸海洋性気候は気温の年較差が小さいのです。」は、「温まりにくく冷めにくい」の間違いだなはいでしょうか?
ご指摘ありがとうございます!
修正しました!
わかりやすすぎ