フィヨルドとリアス式海岸の違いを一瞬で区別する方法とは?【沈水海岸まとめ】
どうも、ひろです。
今回は、フィヨルドやリアス式海岸といった沈水海岸について解説していきたいと思います。
ちなみに、リアス式海岸という言い方もあるのですが、教科書的にはリアス海岸と表記されることが多いので、ここからはリアス海岸に表記を統一します。
フィヨルドとリアス海岸の違いは何かしっかり区別できていますか?
どちらも沈水海岸と呼ばれる海岸で、違いが怪しいという人もいるのではないでしょうか。
今回は、この2つの違いを明確にしていきます。
沈水海岸とは?
フィヨルドもリアス海岸も沈水海岸ということですが、そもそも沈水海岸とは何なのでしょうか?
沈水海岸とは、海岸付近の陸地が沈降したり、海面が上昇したりすることで、海水が陸地に入り込んでできた地形。
字の通り、水に沈んでできる海岸ということです。
沈水海岸に分類される地形で覚えておくべき地形は3つあります。
これらは、すべて何らかの地形が水に沈んでできた海岸なので、もともとどんな地形だったのかを考えていけば、違いも簡単に理解できるはずです。
でき方にも注目しながらそれぞれの地形について詳しく見ていきましょう。
フィヨルドについて
まずは、フィヨルドです。これは、ノルウェーのガイランゲルフィヨルドの写真です。
フィヨルドのでき方から特徴を掴んでいきましょう。
フィヨルドのでき方と特徴
フィヨルドとは、氷河による侵食でできたU字谷に海水が入り込んでできた入江です。
つまりもともとはU字谷だったのです。U字谷って何だっけ?という人は、次の記事も参考にしてください。
重い氷河によって、谷底が丸くU字のように削れるのでした。
ここに、水が入り込んでできるのがフィヨルドです。
つまり、フィヨルドの海底は水深が深いところでも比較的幅が広く、急な崖が現れることもあります。
さらに、もともと幅の広いU字谷だったので、陸地に深く入り込んでいるという特徴もあります。
- 水深が深いところでも幅が広い
- 断崖絶壁
- 陸地に深く入り込んでいる
有名なフィヨルド
次にテストで問われる可能性のある、有名なフィヨルドを抑えていきましょう。
フィヨルドは、もともと氷河の影響を受けたU字谷だったということは、氷河が発達していた場所にあるわけです。
つまり、高緯度にあることが予想できそうですよね。
それに加えて、もう一つ、偏西風が直接当たる場所がポイントになってきます。偏西風は次の記事で詳しく解説しています!
これは、偏西風によって海からの湿った空気が陸地に運ばれてくるため、大量に雪を降らせることができるからですね。
- アイスランド
- ノルウェー〜デンマーク
- カナダ北東部〜グリーンランド
- ニュージーランド南西部
- チリ・アルゼンチン南部
ここで、ちょっと考えてみてください。
- 高緯度(=かつて氷河が発達していた)
- 偏西風があたる
この特徴を聞いてピンとくることがあると思います。
そうです。高緯度で偏西風が当たるところといえば、西岸海洋性気候(Cfb)でした。まだ、習ってない人や忘れちゃった人は次の記事を読んでみてください。
フィヨルドは必ず西岸海洋性気候に存在するというわけではないですが、西岸海洋性気候の分布と関連づけて頭に入れてしまいましょう。
フィヨルドの生活
フィヨルドではどのような生活が行われているか頭に入れていきましょう。
まずは、フィヨルドの特徴を思い出してください。
高緯度で、断崖絶壁に囲まれていて、何だか生活しにくそうですよね。
しかし、意外なメリットがあるのです。
それは、大きな貨物船が入港しやすいというメリットです。
幅が広く、崖に囲まれている地形は、港と形が似ていて、まさに天然の港として生かされています。
さらに、フィヨルドはもともとU字谷だったため、かなり内陸までフィヨルドが形成されていて、普通の港よりも内陸まで船で入っていけるという利点があります。
これは、ノルウェーのナルヴィクという港の地図です。
フィヨルドにある港なので、内陸まで船でくることができるのが地図からわかると思います。
そして、このナルヴィクという港には、もう一つ重要な知識があります。それは、ナルヴィクは不凍港であるということです。
不凍港とは、 冬でも海面が凍らない港。
特に、ノルウェーのような高緯度の地域では、本来冬になると海が凍ってしまって船が入ってくることができなくなってしまうのですが、このナルヴィクという港は凍らないので物流の拠点となっているというのは覚えておいた方がいいです。
北緯68度とめちゃくちゃ北にあるナルヴィクですが、なぜ冬でも凍らないのでしょうか?
正解は、北大西洋海流という暖流が付近を流れていて、温かい海水が流れているからです。
これも西岸海洋性気候の特徴でしたね。
リアス海岸について
続いてリアス海岸です。これは、三重県志摩市にあるリアス海岸、英虞湾(あごわん)の写真です。
複雑に入り組んでいるのがわかると思います。これも、どのようにしてできたかを考えていけば、納得できるはずです。
リアス海岸のでき方と特徴
フィヨルドはU字谷が沈んだものでしたが、リアス海岸は何が沈んだものでしょうか?
リアス海岸は、河川の侵食によってできたV字谷に海水が入り込んでできた入江です。
フィヨルドとの違いは氷河によって侵食されたか、河川によって侵食されたかというわけです。
このように、V字谷がよくみられる山地に海水が侵入すると、リアス海岸が出来上がります。
谷のように侵食されて低くなった場所は海の底に沈み、標高が高い山の尾根は海の上に顔を出します。
なので、水深が深く、複雑な海岸線が現れるというわけです。
- 水深は深い
- 複雑で入り組んだ海岸線
有名なリアス海岸
リアス海岸は、フィヨルドのときと違って、高緯度(=氷河が分布していた)という明確な基準はありません。
しかし、V字谷ができる場所ということは、急な川で流れが速くないといけないですね。
まさに、この条件に当てはまるのは日本の川です。
なので、日本にはリアス海岸が多くあります。
覚えておくべきリアス海岸をまとめました。
- リアスバハス海岸(スペイン西岸)
- 三陸海岸(岩手県)
- 志摩半島(三重県)
- サンフランシスコ湾
- シドニー
特に、スペインのリアスバハス海岸はリアス海岸の由来となった海岸なので頭に入れておくといいでしょう。
リアス海岸がみられる岩手県の陸前高田市周辺の地図です。
ノコギリのようにギザギザと入り組んだ海岸になっているのがわかると思います。
このようにギザギザしているかどうかで、フィヨルドとリアス海岸を見分けることができるわけです。
リアス海岸の生活
リアス海岸は入り組んでいるので、外の海に比べて穏やかで、水深も深いことから天然の港として古くから使われてきました。
港として使いやすいというのは、フィヨルドと同じですね。
さらに、波が穏やかという特徴を生かして養殖が盛んに行われています。
三陸海岸では昆布やわかめといった海藻の養殖が、志摩半島では真珠の養殖が有名ですね。
このように基本的にメリットが多くありそうなリアス海岸ですが、一つだけ注意しておくことがあります。
それは、津波の被害が大きくなりやすいということです。
リアス海岸では、海側から陸地に向かうに連れてスペースが狭くなっていくので、一気に周囲の水が一点に集まって津波が大きくなってしまうのです。
これも一緒に頭に入れておきましょう。
エスチュアリー(三角江)について
沈水海岸の3つ目の地形としてエスチュアリーを紹介しています。
エスチュアリーは、土砂があまり運ばれてこない河川の河口部に水が入り込むことで作られる地形です。
入江がラッパ状の形をしているというのが特徴です。
川の河口の形は、エスチュアリー(三角江)とデルタ(三角州)の2つに大きく分かれます。
両者を比較しながら理解して行った方がいいと思うので、エスチュアリーに関しては次の記事を参考にしてください。
主なエスチュアリーとしては、上の地図上の3つを抑えておきましょう。
- テムズ川
- セントローレンス川
- ラプラタ川
沈水海岸のまとめ
いかがだったでしょうか?
紛らわしいフィヨルドとリアス海岸ですが、どのようにできたかを考えていけばラクに覚えられますね。
というわけで、最後に沈水海岸についてまとめます。
沈水海岸
- 海水が陸地に入り込んでできた海岸地形
- 原因は海岸付近の陸地が沈降したり、海面が上昇したり
◇フィヨルド ← U字谷(氷河)
- 氷河が発達していたところ
- 水深が深いところでも幅が広い
- 陸地に深く入り込んでいる
(例)ノルウェー、南米の南端、ニュージーランドの南西部
◇リアス海岸 ← V字谷(河川)
- 山がちで川が急なところ
- 入り組んだ海岸線
- 波が静かで養殖に適している
(例)三陸海岸、志摩半島、リアスバハス海岸(スペイン)
◇エスチュアリー(三角江)
- 土砂の少ない川の河口が沈降してできたラッパ状の入江
- 三角州との違いに注意
(例)テムズ川、セントローレンス川、ラプラタ川
今回学んできた地形は、すべてもともと陸地だった場所が沈んでできた海岸でした。
しっかり整理して覚えていってくださいね。